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研究員ブログ

TMRI ColumnNo.16

つくば市超小型モビリティ実証実験(講習編)

茨城県つくば市では、2014年1月より国土交通省の支援を受けて、市内での「超小型モビリティ」を使った実証実験を行っています。実験開始当初より市の公用車や防犯パトロール車両として活用していますが、2015年8月より市民が生活の中で利用できる「シェアリング実験」も開始しています。このシェアリング実験に参加しましたので、今回と次回のコラムで様子を紹介したいと思います。

そもそも、「超小型モビリティ(写真1)」という乗り物をご存知でしょうか。国土交通省の定義によると「交通の抜本的な省エネルギー化に資するとともに、高齢者を含むあらゆる世代に新たな地域の手軽な足を提供し、生活・移動の質の向上をもたらす、省エネ・少子高齢化時代の『新たなカテゴリー』の乗り物」となっています。

1~2人乗りのコンパクトな車体で運転が容易なことや、エネルギー消費量が通常の自動車の1/6(電気自動車の1/2程度)と省エネルギー性が高いことがウリで、少子高齢化やエネルギー枯渇に端を発する社会的課題を緩和する移動手段となることが期待されています。

つくば市のシェアリング実験は、1人乗りのコムス(トヨタ車体製)と2人乗りのNMC(ルノー/日産製)が各4台、計8台で行われています。ちなみに、つくば市ではこの他にも公用車用の超小型モビリティを数台保有しています。コムスは四輪の原付(第一種原動機付自転車)として既に市販され、コンビニエンスストアの配送などで用いられています。

一方、NMCは軽自動車のナンバーをつけていますが、原付と軽自動車の間に新設された新しいカテゴリ(超小型モビリティ)の車両で、軽自動車の保安基準の緩和を受けているという扱いとなっており、日本国内での市販はされていません。両タイプとも自賠責保険に加えて、任意保険へも加入済みです。

さて、シェアリング実験に参加するためにはつくば市が実施する「超小型モビリティ運転者講習」を受講しなければなりません。私(40代男性)が参加した講習には、60代男性、50代女性、30代女性を合わせて4名が受講しました(写真2)。30分ほどかけて職員の方から「制度の全体像」「車両の概要」「運転上の注意」「車両予約の仕方」などを教えてもらった後、市役所の駐車場で実車を使った運転操作の説明を受けます(写真3)。

  • 写真1

    写真1

  • 写真2

    写真2

  • 写真3

    写真3

構内で数分走らせた後は、すぐに参加者単独で公道へ出ての走行が可能となります。通常の自動車とはシフトレバーやサイドブレーキなどの運転設備が異なっていることに加え、NMCは海外メーカー製のため方向指示器レバーが左側にあるなど、超小型モビリティでも差異があるので、多少慣れが必要となるかもしれませんが、年配の受講者の方も特段問題なく運転されていました。最後に充電設備の利用方法をひと通り練習すると、無事に受講済証をいただき講習はすべて終了です(写真4)。警察との取決めにより、つくば市内で超小型モビリティを運転する際は、運転免許証に加えて受講済証を携行することが求められています。

写真4

写真4

超小型モビリティ実証実験を担当するつくば市・スマートシティ推進課の方に話を伺ったところ、シェアリング実験への参加者は40~60代が中心で男女ほぼ同数だが、若い住民の参加はほとんどないとのこと。

また、当初想定の200名程度の参加定員に対し、現時点では半数程度(100名強)の参加者にとどまっているが、1回あたりの利用時間に制限を設けていないため、既に車両の予約が非常にとりづらくなっており、参加者数や運用方法の見直しを考えているとのことでした。市内3カ所(市役所・駅前・大学)に貸出・返却ステーションを設け、市内全域での走行を認めていますが、買い物などの生活の足というよりも、観光用途などでの利用が多く、そのため1回の利用時間も半日や全日と長くなる傾向があるのではないかと思われます。

実際の運転にあたっては「車体が小さく他の車に認知されづらい」「窓ガラスがないため雨の日や寒い日の運転はつらい」「感応式信号が反応しないことがある」「駐車スペースは通常の1台分必要」といった声もあるようですが、こうした課題については、今後の普及の可能性とともに次回のコラムで取り上げたいと思います。

執筆者主席研究員 渡辺 宏一郎