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研究員ブログ

TMRI ColumnNo.18

富士山噴火に関するセミナー開催

2015年11月4日に東京・大手町にて自然災害リスクセミナー「自然災害研究の最前線ー富士山噴火と企業の対応ー」を開催しました。最近、日本列島で火山活動が活発化しているように感じられることから本セミナーにも高い関心をお寄せいただき、当初予定を大きく上回る約300名の方々の参加を得て、大変盛況なセミナーとなりました。内容の詳細は、追って東京海上研究所のHP上でご案内しますが、本コラムではエッセンスのみ簡単にお伝えしたいと思います。

小山 真人 教授

小山 真人 教授

基調講演は静岡大学・防災総合センター副センター長の小山 真人教授にお願いをしました。「富士山の噴火史と災害予測-現状と課題-」と題し、富士山噴火の全体像をお話しいただきました。ハザードマップ作成に携わった当事者として、過去の噴火の歴史や、噴火した場合にどのような現象が発生するのか、映像を交えてわかりやすく解説いただきました。講演では、現在のハザードマップ作成以降に新たな歴史的事実(歴史上の最大噴火規模が想定よりかなり大きかったなど)が判明し、ハザードマップ見直しが必要であることや、メディア・報道などが不正確な情報を流すことがあり社会が過剰反応している面があることなど、われわれの認識を改めなければならないと思う点をいろいろご指摘いただきました。

岩田 孝仁 教授

岩田 孝仁 教授

次いで、同じく静岡大学・防災総合センターの岩田 孝仁教授より、「富士山噴火への社会的対応」と題し、われわれが噴火に対しどう対応すべきかについて講演をいただきました。岩田教授は昨年度まで静岡県庁に在籍されており、長年、防災行政に携わってこられました。直近では県の危機管理監兼危機管理部長として、噴火や地震・津波などへの対策の陣頭指揮を執られており、行政官としての経験を踏まえた話しには、印象的な内容が多くありました。甚大災害を経験しても、30年ほどで記憶が薄れてしまうことを、1989年にご自身が経験された「東伊豆単性火山群(伊豆東部火山群)」への対応を引き合いに話されました。噴火の被害を受ける企業に対しては、直接的な被害に加え、間接的な被害(短期的・中長期的)を想定するという視点の重要性や、有事の際に組織・従業員個人が各々どう対処すべきかを検討しておかなければならないという指摘をいただきました。

高橋 恭弘 部長

高橋 恭弘 部長

最後に、トヨタ自動車株式会社・東富士研究所管理部の高橋 恭弘部長より、「富士山噴火防災の取り組みについて」と題し、企業の立場から富士山噴火にどう対処するかについて講演いただきました。東富士研究所は富士山山頂からわずか20kmの距離にある静岡県裾野市に位置し、200万㎡という広大な敷地を擁していることから、富士山が噴火した場合に大きな影響を受けることが予想されます。高橋部長は、これまでの人事労務管理や事業所管理の豊富な経験を活かし、東富士研究所の噴火への対策を検討されていることから、具体的かつ現実的な対策を紹介いただきました。トヨタならではの「現地現物主義」を実践された鹿児島(桜島)や長崎(普賢岳)などでの数度の噴火被災地調査の内容や、東富士研究所の噴火対策の検討体制を、映像を交えて具体的に説明いただき、参加者は強い関心をもって聴講されていました。また、トヨタ自動車から提供いただいた「火山灰の実物」や「噴火対策グッズ」を展示するコーナーを設けましたが、講演の合間には多くの参加者で賑わっておりました。

会場の様子

会場の様子

東京海上日動火災保険株式会社・取締役社長 永野 毅から冒頭の挨拶でも述べましたが、私ども東京海上グループは噴火を含む自然災害リスクに対し、「保険商品を通じた安心・安全の提供」「大学との産学連携による防災・減災手法の研究推進」「子どもたちへの防災教育の充実」により一層注力してまいります。本セミナーが、皆様の防災・減災、BCPについて考えるきっかけになったのであれば、主催者として大変うれしく思います。

執筆者主席研究員 渡辺 宏一郎