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セミナー

2011年度地球温暖化セミナー

グリーンエコノミーとサステナブル経営

東京海上日動と東京海上研究所は、「地球温暖化に関する総合プログラム」(2007年11月発表)における環境啓発の取組みの一環として、毎年地球温暖化セミナーを開催しています。 2012 年6月に、グリーンエコノミーを主要テーマの一つとするリオ+20が開催されるのをきっかけに、グリーンでサステナブル(自然環境を重視した持続可能)な社会の構築に向けた取組みが活発化するものと思われます。そこで、2012年2月に「グリーンエコノミーとサステナブル経営」をテーマとしたセミナーを開催しました。

開催日時・会場

  • 日 時
    2012年2月9日(木)13:30〜17:00
  • 会 場
    東京海上日動ビル新館15F
  • 主 催
    東京海上日動、東京海上研究所
  • 後 援
    朝日新聞社

講演等の概要

開会挨拶
東京海上日動火災保険株式会社 取締役社長 隅 修三
隅 修三
講演①21世紀の新しいパラダイムへ
グリーンエコノミーと日本
慶應義塾大学大学院 教授(前環境事務次官) 小林 光 氏
小林 光 氏

講演内容

環境対策は経済の足手まといではありません。公害防止投資で日本経済は縮小しておらず、重厚長大産業は厳しい環境規制にもかかわらず生産増加によって収益を確保してきました。環境に配慮しない企業は市場に重大な損失をもたらし地域経済を破壊しますが、環境配慮企業は新しい財・サービスを生み出し、一国の経済において重要な地位を占めます(図表1)。環境対策はプラスの経済効果を生むのです。
需要側の省エネ効率を示すマクロの炭素生産性(CO2/GDP)からわかるように、この20年で日本の省エネ効率の高さは世界にキャッチアップされてしまいました。
しかし、日本には、「環境関連特許件数は多い」「既にコンパクトシティでありスマート技術導入効果が大きい」「3.11インパクトで省エネ・新エネマインドが高い」などの強みがあります。これらを活かして、日本の企業は、世界の環境市場の新ルールを考え、提案することができます(図表2)。
途上国の人口増加、資源の消費増と価格上昇、エネルギー不足、水資源の減少、災害の増加が生じます。全ての製品・サービスに環境性能の向上が必要で、あらゆるものがエコビジネスになります。社会的費用顕在化のリスクに備える経営の実践を期待しています。

  • 日本の公害対策の経済的帰結

    図表1 日本の公害対策の経済的帰結
    (出典:慶應義塾大学)

  • 世界環境市場における日本の強みは何か?

    図表2 世界環境市場における日本の強みは何か?
    (出典:慶應義塾大学)

講演②震災後のエネルギー問題と環境・エネルギー技術
三菱重工業株式会社 取締役 常務執行役員 西澤 隆人 氏
西澤 隆人 氏

講演内容

東日本大震災により、社会で環境・エネルギー問題に関する意識変革が生じ、電力の安定供給と需要抑制、原子力の安全性や必要性、再生可能エネルギーの促進等、エネルギー確保の重要性と省エネへの関心が非常に高まりました。
地球温暖化、資源の枯渇、環境汚染等の解決には、低炭素化技術革新が必要です。また、エネルギーの安定供給(Energy)・環境負荷低減(Environment)・経済発展(Economy)に加え安全(Safety)を実現するためには、エネルギー・環境分野におけるトータルソリューションによる全体最適が必要です。
低炭素化実現のための方策として、原子力発電利用、自然エネルギーの開発・普及、LNG火力導入拡大、技術革新、石炭ガス化複合発電(IGCC)、固定酸化物型燃料電池(SOFC)、海洋エネルギー利用発電システム、核融合技術があります。
そうした技術を最適かつ統合的に活用し、低炭素社会を実現することこそがトータルソリューションです。

講演③グリーン・サステナブル経営
アクセンチュア株式会社 執行役員 西村 裕二 氏
西村 裕二 氏

講演内容

現在、モノを買わない消費者、心の豊かさの方が大事だと考える消費者が増えています。「暮らしの脱所有化」「幸せの脱物質化」「人生の脱貨幣化」と呼んでいますが、こうした人たちは増えると思っています。現代は人々の価値観が大きく転換しており、企業にとって、既存のビジネスモデルは成立しません。企業は社会が必要とする限りにおいて存続できるものであり、時代とともに変わっていく社会が必要とするものや、新たなビジネスモデルに対応できる企業でないと生き残れません。
温暖化対策、CO2排出量25%削減などはあくまでも手段であり、最終目標は持続可能な社会の実現です。どういう日本にしていきたいのか、長期的なビジョンで考え、大幅な省エネとエネルギー転換や街づくりに取り組み、日本の方向性を見極めることが大切です。政治・産業界は、真のビジョン、実現のためのしくみ、費用対効果を明確にしたコスト負担の議論などを示していくことが必要です。
今後、企業が市場が望むものを創っていくためには、最初からNGOや市民などと共に創り上げていく共創型のコミュニケーションやマルチステークホールダーを通じた手法なども必要となってくるでしょう。

  • グリーン市場をとらえる6つのポイント

    図表3 グリーン市場をとらえる6つのポイント
    (出典:アクセンチュア)

  • まとめ:日本企業のやるべきこと

    図表4 まとめ:日本企業のやるべきこと
    (出典:アクセンチュア)

パネルディスカッショングリーンエコノミーとサステナブル経営
モデレーター
髙橋 万見子 氏朝日新聞社 論説委員 GLOBE記者
パネリスト
小林 光 氏慶應義塾大学大学院 教授 前環境事務次官
西澤 隆人 氏三菱重工業株式会社 取締役 常務執行役員
西村 裕二 氏アクセンチュア株式会社 執行役員
パネルディスカッションの様子

講演内容

パネルディスカッションでは、次のような意見が示されました。

  • 環境は「我慢」ではありません。新しい価値への頭の切り替えが必要です。
  • 資源は有限です。将来世代のために3つのE(環境、エネルギー、経済)+S(安全)に取組む必要があります。
  • これまでは先進国が豊かになることを考えていましたが、これからは世界全体が豊かになることを考える必要があります。日本企業の潜在力は高く、全力でこれに取組むべきです。
  • 政府は、長期かつグローバルな視点でのビジョンの提示、政策立案をお願いします。
  • 我々一人ひとりが粘り強く3E+Sに取組む必要があります。
  • 本物を見極めることが出来、二項対立に陥ることのない思考力のある人材の育成が必要です。

以上