To Be a Good Company

セミナー

2013年度自然災害リスクセミナー

自然災害研究の最前線
ー先進的な防災の実現に向けてー

東京海上研究所では、毎年社外向けのセミナーを開催しています。8回目となる本セミナーでは、地球温暖化の影響などで激甚化する自然災害リスクに焦点をあて、専門家の皆さまから研究の現状や、先進的な防災実現に向けた取組みをご紹介いただきました。企業のお客様、代理店さんを中心に約200名のご参加を頂き、大盛況のうちに幕を閉じました。以下では、セミナーの各講演内容の概要についてご紹介いたします。

開催日時・会場

  • 日 時
    2013年11月22日(金)13:30〜17:10
  • 会 場
    東京海上日動ビル新館15F
  • 主 催
    東京海上日動、東京海上研究所

講演等の概要

開会挨拶
東京海上日動火災保険株式会社 取締役社長 永野 毅
永野 毅
講演①日本の力を結集して自然災害への備えを
気象庁 参事官 隈 健一 氏
隈 健一 氏

講師略歴

1983年気象庁入庁。気象庁予報部数値予報課において、スーパーコンピュータを駆使した数値予報技術、特に地球全体の気象を予測するモデルの開発に従事、フロリダ州立大学研究員を2年間経験。その後、予報部業務課において航空分野、防災分野の業務経験を積み、新潟・福島豪雨、福井豪雨、台風10個の上陸があった2004年を課長補佐として対応、大阪管区気象台技術部長、総務部航空気象管理官、予報部数値予報課長、予報部業務課長を経て、2012年より総務部参事官として、技術開発推進、気象情報利活用推進等を担当。

講演内容

日本は自然災害が多い国である。しかし、一方では自然の恵みが豊富にあるということを意味する。また、自然災害を通して日本の国民性が培われたといっても過言ではない。地球温暖化が世界的な問題となっている現在、IPCC第5次評価報告書で公表されている通り、今世紀末までに一部地域で極端な降水がより強く、より頻繁となる可能性が非常に高いことが分かった。
このように将来ますます増加するであろう自然災害に対して、気象庁は自然科学に立脚した技術に基づき、観測、解析、予測を行い、それをわかりやすく的確に伝えることで災害の被害軽減を図っている。今年の8月30日に運用を開始した特別警報をはじめとして、今後も住民、社会の判断に資するため、気象庁として伝え方や伝達手段を検討、改善しながら情報提供を進めていく。

講演②災害環境への気候変動影響評価研究の進展
京都大学防災研究所 教授 中北 英一 氏
中北 英一 氏

講師略歴

京都大学工学部土木工学科卒、同大学院工学研究科土木工学専攻修士課程終了。京都大学防災研究所助手、助教授、工学研究科助教授を経て、現在は京都大学防災研究所気象・水象災害研究部門教授。この間、アイオワ大学客員助教授、国立シンガポール大学客員研究教授を併任する。工学博士。専門は、レーダー水文学、水文気象工学。レーダーを用いた豪雨・洪水予測に長年携わるとともに、現在は気候変動による国内外の災害環境への影響評価も実施している。また、ハリケーンカトリーナ等の国内外の災害調査にも従事。土木学会水工学論文奨励賞、水文・水資源学会学術賞を受賞。気象レーダーや気候変動に関するいくつかの省庁の委員もつとめている。

講演内容

気候モデルの高解像度化が実現することによって初めて、我が国の洪水、高潮・高波・波浪、風災害などの災害環境への気候変動による影響評価が可能となった。このような災害をもたらすものに台風、集中豪雨、ゲリラ豪雨(局地的集中豪雨)があるが、台風、集中豪雨については現在の気候モデルで影響評価を行うことが可能である。一方、ゲリラ豪雨については、解像度が足りず現段階では評価できないため、気候モデルの更なる高解像度化が今後の重要課題のひとつである。
また、気候モデルには依然として不確実性がある。しかし、不確実だからといって災害環境への対応を行わないでいると、将来の適応が手遅れになる危険性がある。「はっきりとはわからないが進める」という認識をもちながら、災害時に「具体的な実行があって助かった」という経験を蓄積することによって社会全体で適応していくことが重要である。

講演③南海トラフ巨大地震のスーパーサイクル
高知大学 総合研究センター 特任教授 岡村 眞 氏
岡村 眞 氏

講師略歴

専門分野:地震地質学、長期地震予測研究
趣味:アウトドア全般、料理づくり
昭和24年(1949年)2月5日佐賀県生まれ
昭和49年3月東北大学大学院理学研究科修士課程修了(理学修士)、平成2年2月理学博士(東北大学)
平成6年4月から高知大学理学部教授、平成18年4月から高知大学総合研究センター防災部門長併任、平成24年4月から高知大学総合研究センター防災部門特任教授
外部委員経歴
地震防災関係:内閣府中央防災会議「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」委員、内閣府「南海トラフの巨大地震モデル検討有識者会議」委員など

講演内容

地震の予知は「いつ、どこで、どのくらいの規模か」の3つを満足させるものでなくてはならない。
「いつ」については南海地震に関して言えば、早ければ2025年、遅くても2035年までに来る可能性が高いことが判明している。ただ「どこで、どのくらいの規模か」については現時点でははっきりとわかっていない。それを知るために、過去から現在に至るまでの地震発生のパターンを理解する必要がある。
詳細が把握されている東南海の過去の地震には、明応の南海地震(1498年)、慶長の南海地震(1605年)、過去1000年間では最大の宝永大地震(1707年)、安政東海・南海地震(1854年)、昭和東南海地震(1944年)、昭和南海地震(1946年)があり、約100年周期で発生していることがわかる。また、地質調査の結果、2000~2300年前と4000年前に、東南海エリアでマグニチュード9.0クラスの地震が起き、30m級の大津波が発生したことがわかった。
こうした調査結果から判明した過去の発生サイクルを考えると、今後数十年の間に2000年に1度規模の大規模南海地震が発生する可能性を考慮し、防災対策を考えていかなければならない。

講演④自然災害とリスクコンサルティング
東京海上日動リスクコンサルティング株式会社 常務取締役 庄子 憲義 氏
庄子 憲義 氏

講演内容

未だ記憶に新しい東日本大震災は、金曜日の午後に発生したため、従業員が会社におり、企業は 比較的早期に復旧を果たすことができた。しかし、首都圏直下地震、南海トラフ地震等のような大規模地震が休日に起きた場合、企業のBCP実行や復旧の観点で「従業員が会社に集まるまでにどの程度の時間を要するか」ということが企業の大きな悩みの種のひとつとなっている。
当社のソリューションとして、例えば首都圏の場合だと「都心の液状化による交通網へのダメージ」や「従業員の住居分布」等を加味した上で、従業員の出社所要時間等の分析を行うことが可能である。このようなソリューションをBCPの見直しや災害対策本部の場所が適正かどうか、帰宅困難者対策としてどのようなルートを使用するべきか等に利用頂いている。また、物流企業向けに、交通規制の影響や物流ルートの被災状況を加味した物流ネットワークへの影響度評価も行っている。
今後も大学や企業との共同研究を通じ、更なるソリューションの開発・提供を進めていく。

閉会挨拶
東京海上日動火災保険株式会社 専務取締役 岩井 幸司

以上