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研究員ブログ

TMRI ColumnNo.9

台風の将来変化について発表
〜気象学会春季大会(1)〜

先日、日本気象学会の春季大会(5月21日~24日 茨城県つくば市)に当研究所メンバーも参加しましたので、学会の様子や研究発表について、本コラムで2回にわたって紹介したいと思います。

日本気象学会は1882年に設立された大変歴史のある学会です。気象に関連する仕事をしている研究者や企業人を中心とした約3,400名の会員で構成されており、年に2回、春と秋に大会が開催されます。春は東京地区、秋は支部のある仙台、福岡、京都、名古屋、札幌での開催となり、今年の秋は京都で開催予定です。

東京海上研究所では2007年より台風を中心とした自然災害リスクの研究を行っています。その研究成果について、2009年の日本気象学会春季大会で初めて発表を行いました。その後も、研究のレベルアップのために、最先端の研究内容を学び、また、研究成果を発表する場として、継続的に学会に参加しています。

学会では、気象観測手法の開発から気象現象の発生原因の究明、地球温暖化による気候変動、気象教育まで幅広い内容の研究成果が発表されます。今回参加した学会では、ひまわり8号が今年の7月より本格的な運用が始まることに関連して、専門分科会「次期静止気象衛星『ひまわり8号』がもたらす未来の気象学」が開催されました。そこでは、ひまわり8号によって新たに得ることのできる、より高解像度かつ高品質な観測データをどのように研究や気象予報に活用するかについて、気象庁や様々な大学、研究機関から多くの研究が発表され、活発な議論が行われました。

また、学会では他の研究者の研究成果を聴くだけではなく、事前申し込みを行うことで、自分の研究成果を発表することが出来ます。当研究所では入会以来、東京大学、名古屋大学、京都大学と共同で行っている台風や水災に関する研究成果を発表し、研究者の皆さんと意見交換を行っています。

ポスター発表の様子

ポスター発表の様子

発表形式は、講演会場で聴講者を対象にプレゼンテーションをする方法と、会場のオープンスペースに研究成果を掲載したポスターを掲示し、個別に説明を行う方法があります。
今回は、台風が最も強くなる海域の将来変化についてシミュレーションした結果を「CMIP5マルチモデルと確率台風モデルを組合わせた将来台風予測③~生涯最低気圧となる緯度の将来変化~」と題し、ポスター発表を行いました。研究の結果は、台風が最も強くなる海域は、将来的に北上傾向を示し、今世紀末には日本の近海で最も強くなる台風の割合が増加するというものです。これは、おそらく温暖化による日本近海での海面水温の上昇に起因すると考えられますが、詳細な原因については今後解析を行っていきたいと考えています。今後の研究の進め方や結果をどう捉えるかなどについて、多くの研究者の皆さんと意見交換をさせて頂き、研究を進めていく上で有意義なご意見をたくさん頂きました。

今後も参加していきますので、学会で発表された最新の研究成果など、本コラムでご紹介できればと思います。

執筆者研究員 斎藤 龍生