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研究員ブログ

TMRI ColumnNo.7

台風に『適応』(adaptation)する
~防災・減災への取組み~

将来、地球温暖化によって海面水温が上昇し、大気中の水蒸気量が増加することで、降水量や台風の強度が増すことが予想される。既にゲリラ豪雨や竜巻のような極端現象が増えていることを実感している方も多いかもしれない。人類がかつて経験したことがない「急激な」地球温暖化が進む中、気象災害から人命を守るためには、防災・減災の新しい形を考える必要がある。

みなさんは日本国内の着工新設住宅のうち鉄筋コンクリート造(鉄骨鉄筋コンクリート造を含む。以下同)がどのくらいの割合を占めているかご存知だろうか。2013年度の住宅着工統計によると、全国の着工新設住宅のうち鉄筋コンクリート造は27%(木造56%)であり、都道府県毎に見ると、例えば2番手の東京都は48%(木造34%)である。そして、トップは沖縄県でなんと89%(木造3%)とその差は歴然としている。沖縄県では木材が高価なことも起因しているが、この理由の1つが台風への備えである。

台風に対する沖縄県民の一般的な対応は次の通りである。
日頃から、数日停電したり、外出できなくなったりしても困らない備えをしておく。そして、台風が接近する前に、風で飛びそうなもの(ボルト留めしてある看板を含む)を室内にしまい、排水が詰まらないよう掃除をする。後は、飛散防止用の針金が入ったガラス窓がはめこまれた、台風でもびくともしない頑丈な鉄筋コンクリート造の家の中で、レンタルしたDVDでも見ながら(停電時は非常灯で読書でもしながら)台風が過ぎるのを待つのである。
これは台風への対応の1つの例であり、もちろん地域によってそのやり方は変わるだろう。しかし、国全体で沖縄県の人々のように「対応を習慣化する」、言うなれば台風に「適応」することが出来れば、台風による人命被害をきっと減らせるにちがいない。

ところで、台風にも人間に役立つ面があることをご存知だろうか。
島国であり、河川の短い日本では、夏場に水不足の問題が生じやすい。特に四国地方の瀬戸内海側では、降水量が非常に少ないため、毎年のように水不足に悩まされている。
四国地方最大の早明浦ダムは「四国のいのち」と呼ばれるほど、四国地方の経済や市民生活に密接に関わっている。少し古い事例だが、2005年は四国地方で降水量が非常に少なく、幾度もの取水制限を実施したにもかかわらず、早明浦ダムでは貯水率0%を記録し、一部自治体では夜間断水を実施する深刻な事態となっていた。そのような状況下、広い暴風域を維持したまま九州に上陸した台風14号によってまとまった雨が降り、0%だった貯水率がなんと1日で100%まで回復し、即日、異常緊急渇水対策本部は解散されることとなったのである。
この台風14号は全国的に甚大な被害をもたらしたため、「台風のおかげで」とは決して言えないが、台風への「適応」を進め、人命被害をなくすことが出来れば、いつの日か台風が来て助かったと思える日が来るかもしれない。

執筆者研究員 斎藤 龍生