To Be a Good Company

研究員ブログ

TMRI ColumnNo.6

人々の快適な暮らしに向けた保険会社の役割

人災や天災のニュースが日々伝えられている。そのたびに “明日は我が身の上” と気を引き締めるのであるが、実際には自らを取り巻くすべての危険を把握し、回避することはむずかしい。社会を支えるシステムは巨大化、複雑化しており、自然のメカニズムには謎が多いからだ。危険がない状態、即ち安全が確認できなければ、心配や不安は尽きることがない。そのため、人々は安全と安心を求めて専門家を頼るのであるが、専門家はどのような役割を果たすべきだろうか。

行動経済学の考えによれば、ヒトはむずかしい問題にぶつかると、わかりやすい情報に置き換えて直感的に判断するとされている。
例えば、よく知らない人から説明を受ける場合、内容そのものよりもその人が信頼できる人物かどうかを重視するのである。ここから、安心を提供するためには安全の追及だけではなく、人々の心に向き合い信頼を得る努力をしなければならないことがわかる。この点を専門家が理解していないために、人々の感覚との間にズレが生じるケースがある。

ここで、保険の専門家である保険会社がやるべきことについて改めて考えてみたい。
東京海上研究所と同じ東京海上グループに属する東京海上日動の経営理念には、「お客様の信頼をあらゆる事業活動の原点におき、『安心と安全』の提供を通じて、豊かで快適な社会生活と経済の発展に貢献します。」と掲げられている。確かに、経済的な損失を補償することで安心を提供し、事故防止に向けたサービスによって安心さらには安全を提供することは保険会社の本来的な役割である。しかし、人々の安心と安全に対する意識が高まり、保険会社に対しても新たな役割発揮が求められている。その期待に応えるために次の2つのことが重要と考える。

①お客様の安心につながる情報提供
お客様は事故が起きた時の “備え” だけではなく “安心” も求めているはずである。
例えば、お客様が自然災害への不安を感じていれば、適切な情報を発信して不安の解消に努めることも重要な役割の一つである。しかし、実際にはリスクの種類や影響度などは一様ではなく、万人にとって的確でタイムリーな情報を発信することはむずかしい。今後はデータなどを活用して、それぞれの“お客様が求める”有益なサービスをタイムリーに提供することが課題である。
②お客様との強固な信頼関係づくり
一般的に保険商品は難しく内容がわかりにくいため、保険会社の信頼性が安心につながるバロメーターの一つと考えられる。そこで、より積極的なコミュニケーションを図ることによって、私たちの考えをお伝えし、お客様の意見を吸収する必要があるのではないか。
例えば、一方的な広告発信だけでなく、より密接に双方向に情報を交換する場をつくることができるはずである。そして、「なんとなく信頼できそう」というレベルを超えた、「この会社でなくてはだめだ」という強固な信頼関係を築くことができれば、お客様に “真の安心” を提供することができる。

このように東京海上日動の経営理念がより高いレベルで実現されることによって、一層お客様の快適な生活に貢献することができると考える。

執筆者主席研究員 小村 英弘